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しばらく彼は部屋のなかを調べた。
よく見れば壁には多くの古代文字が刻まれ、恐らくそれがこの部屋の封印を形成しているのだろう。
彼はそれを丹念に調べた。
すると、そこに脱出の方法が記されていた。
彼は右手をあげ、指を三本立てて、呟いた。
「希望」
その刹那、彼はもう元いた灯籠のある小さな建物にいた。
あの部屋へ入ったときと同じように突然ここにいた。
どういうからくりかはわからないが、この世の摂理とは違う何かの力だったのだろう。
明け方だった。
建物から踏み出て見上げた満天の星空は、もう東が少し白み、風が頬を撫でると随分冷たかった。
薄暗い廃墟の側に、巨馬の姿がある。
その足元には、荷物に腰を掛けているシ・ルシオンの姿もあった。
ローブは彼らの元へ歩いていった。
「お待たせ」
オデュセウスは少し驚き、また安心したような風だった。
それと比べて戦士は、特に動じた様子もなかった。
ただ一言、
「首尾は?」
とだけ尋ねた。
ローブは少しためらい、いくつか言葉を探し、
「上々、だろうな。
ただ少し、重いね」
と返した。
程なく彼らは、遺跡を発った。
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