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「マルゴーはね、その歴史を誰も知らないんだ」
連日の馬車移動で、ローブはすっかりばてていた。
シ・ルシオンは涼しい顔だが、ローブはあくまでもただのはみ出し者の僧侶に過ぎない。
非常識な速度で悪路を駆ける馬車の揺れに、そう耐えられるものではなかった。
だがそれでも、彼はマルゴーに到着早々、瓦礫となった中心部をよたよたと歩いて、探索するのだった。
「おかしいと思わないか?
この辺りは、人があまり立ち入ることがない。
その証拠に、周りにはまったく民家がないだろう?
だから、ここは何か理由があって、わざわざ作った遺跡なんだ。
でも、一切の記述が存在しない。
存在はね、知られてるんだ。
百年ほど前には冒険家がここを見つけたし、まやかし師たちはここが、強い力場だと言ってる。
だからマイクラ・シテアも、ここを利用して魔馬車を作ったんだろう。
だが、本来の目的とか、建てられた経緯とかが、まったくわからなかった」
ローブとシ・ルシオンはゆっくりと、破壊されてしまった遺跡を歩き回る。
何か手掛かりはないかと目をそこかしこに向けるが、特にこれといったものはない。
「でも今は、よくわかる。
ここは、大賢者ソルドが建てたものであり、重大な何かを封印するための場所だった。
もっと言うなら、五つの聖地のうち、四つ目の場所だ」
オデュセウスが破壊した建物の周りには、それを囲むように五つ小さな建物がある。
玄武岩のブロックでできていて、扉はない。
それぞれに入って中を確かめるが、小さな一部屋で、宗教らしく中央に灯籠があるだけで、他は多少のがらくたしかない。
「火でも点けてみるか」
枯れ枝などを集めてそれぞれの建物の灯籠に火を点けてみるが、何も起こらない。
「ま、そんなことは、誰でもするさ」
彼らは再び中央の建物に戻る。
瓦礫の下を覗いたり、石張りの床を踏みつけたりしてみるが、何も起こらない。
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