ソルドの墓

6/11
前へ
/11ページ
次へ
ローブは木切れを拾い集め、焚き火から火を取り、小さな五つの建物の中にある灯籠に火をくべた。 そして再び、破壊された建物の中央に立ち、南を見る。  柄が伸びた。 炎が微妙な影を作り、槍の柄が現れた。 同時に槍の切っ先も出現した。 そう意識して初めてわかるほどにおぼろ気だが、間違いなくそれは、三つ又槍だった。  だがローブは、首を横に激しく振った。 「違う、そうじゃない!  俺が探してるのは、三つ又槍じゃない、ソルドの墓なんだ!」  ローブは叫んだ。 苛立ちを隠さず、彼は足を踏み鳴らしながら、三つ又槍の柄が伸びた方へ歩いた。 枯れ枝や低い草を踏み潰し、灯りが届かなくなったところで、彼は足を止めた。  そこには、岩があった。 何の変てつもない、腰が掛けられそうな大きさの、黒くつるりとよく滑るありふれた岩だ。  ローブは思わずその岩に腰掛けた。 何かあるのかと期待はしたが、何も起こらない。 「ちっ、なんだよそりゃ…」 と、落胆してうつむき、再び顔をあげる。  そこには、もうひとつの三つ又槍があった。  遺跡から立ち上る煙が炎に照らされ、渦を巻き、また別れ、天に向けた三つ又槍の形になっている。 その柄の足下は、灯籠の建物。  それだけではない。 「まさか、古代文字?」  偶然かもしれないが、古代の文字が二つ、煙に浮かんでいるように見えなくもない。  ローブは転がるように走った。 瓦礫の建物を迂回し、真北に位置する小屋に飛び込む。 そこで、息を落ち着けながら、彼は古代語で叫んだ。 「天地!」  その途端、彼は別の場所にいた。 冷たく、幾分乾燥した小部屋だった。 部屋は、壁、床、天井が緑色に発光する鉱石のタイルで包まれ、ぼんやりと明るさがあった。 中央に石でできた机と椅子がある。  そしてその机には、朽ちてはいるものの鮮やかな青い法衣をまとったミイラが、突っ伏していた。  顔の横には、見たことのある古文書が、開かれたままある。 バザ大聖堂の地下にあった、あの古文書と同じものだ。 「すげぇ…」  思わずローブは呟いた。  ここは、紛れもなく、大賢者ソルドの墓だった。 そしてそこに伏せているミイラは、間違いなくソルドその人であろう。 トルキスタの三聖人のうち、ローブは二人まで、その存在を自らの目で確認することとなった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加