ソルドの墓

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「なんだ、これは?」  創造神トルキスタと冥王ホーツマルグ、そして魔王誕生の経緯についての記述から始まり、伝承程度であった天界と魔界との戦いについて、詳細が記されていた。 それだけにとどまらず、大地の誕生や、その目的についても、詳細な記述がある。  五つの聖地とその意義についても述べられ、しかも、 「その内の一つは、地上にはなく、我らが見上げる天空にある」 と書かれている。  読み進めればその度に、ローブは驚き、戦慄した。 一つにはその内容に、もう一つには、これを記述するに至った大賢者ソルドの存在である。 「どうやったらこんな内容にたどり着くんだ。  大体、創造神トルキスタってなんだよ」  トルキスタ聖教の伝承には、神、冥王、魔王の存在は記述が残っている。 だが、創造神トルキスタという名は、初めて目にした。 トルキスタ聖教の神はあくまで「神」として伝承されており、その名は伝わっていない。 冥王の名についてもそうだ。 魔王や魔界についても、この古文書ほど具体的な記述は初めてだ。  そして、魔界門の目的も、明確に記述されている。 さらには、魔界門と対をなすもう一つの門、「天界門」の記載もある。 「これは、いけない」  ローブは、その書を読めば読むほど怖くなった。 「これは、止めないと。  マイクラ・シテアを止めないと。  しかし止めてどうなる?」  ブサナベンは、戦士ドルアーノが刺し違える形で滅んだ。 だがそれでは、無意味ではないものの、本質的な解決ではない。 同じような存在であるマイクラ・シテアを滅ぼしたところで、再び争乱が繰り返される。 大賢者ソルドは、そう主張していた。  そして、後半になると、新たな戦士についての記述があった。 「ドルアーノを凌ぐ戦士。  その名はシ・ルシオン」  ローブは震えた。 震えが止まらなかった。 なぜ千年前の人が、あの巨人の名を言い当てるのか。 なぜ千年の間隠され続けた書物に、その名が刻まれているのか。  そして、あの巨人の意義が、目的が、語られていた。
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