ドバイルの戦争

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 バザに程近い場所に、空洞の地下建造物が作られ、そこで巨大な何かが作られている。 これはマイクラ・シテアが、その魔導の力と、千程度の魔物を使って作っている物だ。 バザは聖地だが、それは同時に強力な魔の力場でもある。 トルキスタ大聖堂も、ガラシェも、マルゴーも同じだが、元々彼はよくバザかマルゴーを拠点にしており、今回もやはりバザを選んだ。  魔導師は、以前よりさらに凶悪で不吉で、すでに実体があるのかどうかわからない様になっていた。 その手には常に禍々しい形の杖が握られ、それが彼の魔力をさらに増幅していた。  杖には、その先端近くに、地獄のマグマのように赤く渦巻き輝く宝玉が埋め込まれている。 それには、ある男の魂が格納されている。  ザーグ砦に、バルダ王国に、その人ありと唱われた名将ドバイルである。 「随分、大規模ですね」  杖は、魔導師に言った。 「そう、巨大じゃ。  そしてこの船が、わしをこの地上の支配者たらしめ、そして魔界をも手に入れる、究極の力となる。  その力は」  魔導師は、喉の奥でゴロゴロと笑った。 「冥王をも凌ぐ、不死王への礎となる。  またこの力は、魔界門をこじ開けるじゃろうぅひひひひゃひゃ」  杖は黙って、魔導師が笑い終わるのを待った。 杖は常に穏やかで、魔導師相手でもその態度を一度も崩したことがない。 「これが、空飛ぶ船ですか。  私の想像よりも、遥かに凄まじいですね」  その船は、あるいは船と呼べないかもしれない、極めて禍々しい代物だった。 全体が黒か紫で、所々金色。 蛍光色に光る場所もある。 それらは脈打ち、時には赤く光る。 血管のようなものが浮き出て、筋肉のような物もありそうだ。 全体が鱗で覆われ、その鱗一つ一つに目が付いている。 時おりそれは唸り声を上げ、明らかに生きていた。 「こやつは人間どもの魂を餌に生きておる。  まだまだ赤子じゃが、完成した暁には、空を覆う巨大な生ける船となるじゃろう。  あの魔馬車を越える、最高傑作じゃ」
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