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遅い夜が近づきつつある頃、空に突如、緑色の円が現れた。
そこからバラバラと、化け物が降ってくる。
「おいでなさった」
恐慌に陥る市民たちはフォルタに任せ、ローブは馬を走らせた。
聖騎士団の本営で指揮をしているロドの所である。
ロドの所にも既に報告は来ている。
「どうもどうも」
気楽に言うローブを、ロドは猛烈な形相で睨み付ける。
「貴様、この状況で、よくそうヘラヘラとしていられるな!」
思わずロドは罵倒する。
が、ローブはどこ吹く風で、
「だって、準備できてるでしょう?」
と笑う。
ロドは苦り切った顔だ。
「まあ貴様のことはこの際どうでもいい。
それより化け物共だ。
予定通りの布陣を指示してある」
「ありがとうございます。
明日昼まで、何とか頑張りましょう」
さらりとローブはそう言って、ロドのそばのテーブルに置いてあった羊皮紙の地図に目を落とす。
駒がいくつか置いてあり、それが自陣と敵陣、および市民の配置を示している。
自陣は、市民たちの避難先であるフル-ゲンの丘で、市民を囲むように四部隊が布陣。
一方魔物の軍勢は、市民の南東、ちょうどトルキスタ大聖堂の反対側に終結している。
指揮官は不明だ。
「兵を移動させるか。
市民の壁にしよう」
ロドは副官たちに、軍の移動を指示する。
すぐさま各部隊へ伝令が走り、市民の四方に散開していた部隊が速やかに移動し、魔物の軍勢の前に終結する。
教会の騎士団という性格からあまり実戦経験はないが、それでもこれまでロドはよく鍛えていて、実に統制がとれていた。
フル-ゲンは、周囲より少しだけ小高い丘に位置する。
対する魔物の軍勢は、丘の南東のふもと。
陣地取りとしては悪くない。
「なぜ魔物たちは、わざわざここを選んだんでしょうね?」
ローブはロドに問う。
「どういう意味だ?
我々にとっては有利だが」
「奴らは、どこにでも出現できる。
戦の知識がないのならそんなものかも知れませんが、もしわざとなら、罠の可能性もあります。
少なくともドバイル将軍なら、そもそもこんな布陣は採らず、採るとすれば、我々をあっという間に磨り潰すほどの罠を仕掛けているはずです」
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