第1章

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回想(数か月前の出来事) 並木道、自転車を漕いで通学路を行く。 途中の電気街からは機巧のニュースが流れる。世間は大変らしいが現実味を感じない。 あと1か月もすれば夏休みがやってくる。事前に予定を立てる。 (免許を取るか、バイトか、どちらにしても親の目が気になるなあ。とやかく言われるのは目に見えてるし通学時間で調べるしかない) そう思って調べた中にあったのは―― 夏休みの登校日を終える。 東「なあ颯。今日カラオケに行こうと思うんだけどさ」 颯「悪い!今日用事があるんだ、また今度で良いか?」 東「ああ、まあ良いけどさ……」 羽九「最近付き合い悪いよなー、何やってんの?」 颯「それは……っと」 自転車置き場へ到着したと同時に着メロが鳴る。 羽九「親父さん?」 颯「まあ、な」 東「何て?」 颯「最近帰りが遅い、何やってるんだってさ」 羽九「え、何?如何わしいこと?ひょっとして女?」 颯「んな訳ないだろ」 羽九「じゃあなんだよ」 颯「……バイトだよ」 『バイト?』 東「どこで」 颯「奥多摩、なんか新設部隊が出来たけど人材不足で事務担当が足りないんだって」 東「確かにお前、整理整頓とかスケジュール管理は上手いもんな」 颯「おだてても無駄、会話時間残り1分12秒な」 東「細かいよ」 羽九「しかしだからといってバイトで人員募集するか?世も末だなあ。応募するのも物好きだけど」 颯「給料良いんだよ」 羽九「お前そんなに欲しい物あったっけ?」 颯「別に」 東「……働くのも良いが親御さんに心配かけんなよ?」 颯「義理の、な」 東「孤児だったお前を引き取ったんだよな。そう邪険にする必要はないだろ」 颯「……」 東「じゃあ俺達行くわ。心配かけるのも程ほどにな」 羽九「んじゃねー」 二人が去り、自分が向かう方向と反対の方へ進んだのを確認した後、 颯「……少しオーバーしたか」 自転車のスタンドを上げる。 颯「そんなの解ってるさ」 駅に向かい 颯(別にあの人達が嫌いなわけじゃない) 自転車を止め 颯(感謝もしてるさ) 改札を通り 颯(でも) 電車を待ち 颯(何かがずれている) 時間を見る。 颯(行き違ったような) 電車に乗り、 颯(何かが欠けているような) バスに乗り 颯(抜け落ちたような感覚) バスを降りる 颯(それが何なのか) 空を見上げる 颯(俺には分からない) 颯「しっかし暑いなあ……天気良すぎるんじゃないか?」
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