第1章

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 そう、そうなのだ。  あのとき、オレは親父が来ていたことに気付いていた。  そして使っている画板は親父の力作ではなく、学校で借りた画板。  親父は画板の大きさに驚き 戸惑ったのだろう。  いつの間にか姿は見えなくなっていた。  その日の夕方、出勤前の親父は無口だった。  それ以来 画板の話題は出ないまま、数年後に親父は死んだ。  お互いが心苦しかったんだろう。そう思う。  しばらくしてオレは、写生大会の子どもたちに声をかける。  先生も不審がらず その様子を見つめている。  思えばこの頃は平和だったな。  そして目的はオレ。  子どもの頃のオレだ。  
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