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きゃぁぎゃゃぁぁゃあっ!!
もしかして、もしかしなくてもっ
今の蒼に聞かれた!?よね!?
そう認識するとあたしは顔に一気に熱が集まるのを感じ、穴があったら入りたい衝動に駆られた。
確かに蒼に会いたくて向かっている途中だったけれど、こんな会い方を期待してなかった……!
開いた口が塞がらないままパクパクしていると、蒼はニコッと歯を浮かせる。
「桃井数学苦手なんだ?」
追い討ちーー!!
出来ればこのままスルーして欲しい話題を、この爽やかプリンスは避けてはくれなかった。
あたしは若干涙目になりながら「あはは……うん」と答える。
言っていて乾いた笑いがやけに虚しく響いたように感じた。
そんなあたしの様子なんて気にする様子もなく、蒼は笑顔を崩さない。
「夏休みなくなったらイヤだね?」
「うん……そうなんだ、よね」
しっかり担任との会話を聞かれていて、顔の熱が引かない。
こんな事ならしっかり勉強しておけば良かった……!
今更後悔してもどうにもならず、耐えきれないあたしは蒼から目線を外した。
「俺さ、数学得意なんだ」
不意に風のように耳を通り抜けた言葉に
「うん?」
と、間抜けな声を出すあたし。
あたしの何かが可笑しかったのか、ハハッと声を出して笑う蒼。
蒼、数学得意なんだ……!
より一層羞恥心が輪をかけて大きくなるあたしの肩を、何かがツンツンとつついた。
それに驚いて顔を上げると人差し指で、その手を辿ると蒼のもので。
「俺で良ければ教えてあげようか?」
廊下の窓から吹いた風が髪を揺らし、その隙間から覗く細められた瞳と視線が絡んだ。
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