76人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「え……っ」
えぇぇぇぇっ!?
蒼が?あたしに?
数学を教えて、くれるの……!?
それってつまり……
蒼と2人っきりになれるって、事!?
「いい……の?」
嬉しさのあまり口がにやけてしまいそうになるけれど、必死で口に力を入れて現状を維持しながら控えめに尋ねる。
蒼はキョトンとした表情を一瞬浮かべ、すぐにまたニカッと歯を浮かせた。
「いいから言ってるんだよ。
少しでも補習短くしような」
そう返事が聞こえたのと同時に、キーンコーンと予鈴の音が被った。
「あ、やべ。俺次体育だ!詳しいことまた決めよ。
じゃあ、またな」
「あっ……!」
蒼は風のようにスルリと掴めないまま、あたしの前から姿を消した。
何も返事が出来ぬまま。
開いた口と前に伸ばした右手も、そのまま。
……これ現実?
本当に?
蒼があたしに、勉強を教えてくれる……!
あたしは声にならない叫びを心の中で絶叫し、廊下を全速力で駆け抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!