光の届く先

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「おはよー」 「おはよう」 教室に向かう道のりですれ違う人に男女関係なく、全て笑顔で挨拶をする。 そうするとみんな笑顔を返してくれる。 あたしはほんのこれだけのことが、嬉しくては堪らない。 1番最初の人は大抵驚いた表情を浮かべるけれど、懲りずに挨拶を続けたらいつの間にか友達になったりした。 だからあたしも勝手に笑顔になるんだ。 その中の1人に、蒼も含まれていて。 あたしはこの挨拶がキッカケで蒼と知り合い、蒼を好きになったんだ。 最初から歯を浮かせ『はよ』と返してくれたその人は、大きなスポーツバックを肩から下げていた。 笑顔以外を見たことがなくて。 毎日毎日見せてくれる眩しい笑顔にいつのまにか、あたしの心は蒼に引き寄せられていた。 自分の教室に入り机に鞄だけかけ、そそくさと廊下に出る。 向かう足取りは浮き足立ってしまい、心なしかスキップ調になっていた。 あ、いけないいけない。 ここはひとつ、おしとやかにしなくちゃ。 いつも全力で走ってばかりのあたしは髪や顔が崩れてしいまがち。 好きな人の前ではそんな姿見せたくないとやっと気付いたあたしは、髪を整えゆっくりと一歩一歩丁寧に廊下を歩いた。
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