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蒼の教室のまできて、教壇横のドアからヒョコッと顔を出して覗く。
朝礼までまだ時間があるから、まだ朝練行ってるかもしれない。
いなかったら恥ずかしいから、控えめに教室中を見渡した。
……席にも、いない。
他の場所も……
案の定蒼の姿が見つからず、あたしはガックリと肩を落とした。
期待していただけに、ダメージが大きい。
いつまでもこんな所にいても仕方ないから、クルリと踵を返し回れ右をした、瞬間。
視界に大きく映ったのは眩しく光を放っている、大好きな笑顔。
「……ーっ!!」
「はよ、桃井」
驚きすぎて心臓が飛び出したあたしに、いつものようにはにかんだ笑顔を向ける蒼。
相対しているのに、表情はまるっと正反対に違いない。
「ハハッ、すげー顔」
言葉を発する事なく固まったままのあたしを見て、堪えきれないというように目の前の人は吹き出した。
声を出して笑う姿に、あたしはそこでも口を開けたまま蒼に見入ってしまう。
胸は廊下中に響いてしまいそうなほど大きく高鳴って。
顔にも熱が急速に集まり、火照る。
変な顔だって笑われたっていい。
あたしに向けた、笑顔をくれるなら。
そう思えるほど、あたしは蒼に魅せられているんだ。
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