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「ここでいっか」
蒼がそう言って手をパッと離した場所は、教室からさほど距離のない渡り廊下の隅。
息の上がっていない蒼に対して、乱れた呼吸を正常に戻すのに必死なあたし。
手には蒼の体温が残ったままで、走ったのとは別にあたしの体を熱くさせた。
今、手……っ!
繋がれた、よね!?
未だに何が起こったのか理解出来ていないあたしの頭は、情報処理をしようとしてパンク寸前。
「引っ張ってごめんな、大丈夫?」
酸素を精一杯取り入れているあたしに、渡り廊下の柵に凭れながら顔を傾ける蒼。
眉を少し下げ申し訳なさそうな表情に、きゅんと胸がなった。
蒼のこんな顔、初めて……!
「うん、大丈夫っ」
新たな発見が嬉しくて、大きく頷いてみせた。
「ハハ、桃井はいつも元気だな。
じゃあとりあえずさ、桃井の連絡先教えて?」
「えっ!」
予想もしていなかった展開に驚きを隠せなくて。
ドクンッと大きく、胸が弾ける。
あたしの心臓はさっきからジェットコースター並みに忙しい。
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