光の届く先

14/17

76人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「あれ、ダメ?」 「ううんっ!ダメなんかじゃないよ? むしろ嬉しー……」 スカートのポケットに手をおもむろに突っ込み探るけれど、お目当ての物が見つからない。 「あ、スマホ鞄の中だ……!」 「そうなの?じゃあそれはまた後でいっか」 「ごめん……」 せっかく蒼から言って貰えたのに…… あたしのバカ!! 自分の不甲斐なさに悔しさを感じていると、ニッコリ笑う蒼と目が合った。 「どこで勉強やろっか?」 「あ」 そうだよね、場所まで考えてなかった。 夏休み中図書室は決まった日にちしか開放しないって、なんかで言ってたな。 先生も忙しいのかな。 忙しいって、そういえば。 「蒼、夏休み中って部活忙しいんじゃない?……大丈夫?」 バスケ部は他の運動部に比べ、ハードで厳しいって、サキが言ってた。 休みとかあるのかな。 もしあったとしてもゆっくり休んだり、遊んだりしたいんじゃないかな…… 今更ながらに気付いて、急に申し訳ない気持ちに襲われる。 自分は浮かれてばっかりで、蒼の事考えていなかった。 気が使えない自分が情け無くなり、気持ちと連なるように視線を落としていくと。 「大丈夫じゃなきゃ、最初から声かけてないよ」 頭上から優しい、日だまりのような暖かい声が降ってきた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加