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「あれ、ダメ?」
「ううんっ!ダメなんかじゃないよ?
むしろ嬉しー……」
スカートのポケットに手をおもむろに突っ込み探るけれど、お目当ての物が見つからない。
「あ、スマホ鞄の中だ……!」
「そうなの?じゃあそれはまた後でいっか」
「ごめん……」
せっかく蒼から言って貰えたのに……
あたしのバカ!!
自分の不甲斐なさに悔しさを感じていると、ニッコリ笑う蒼と目が合った。
「どこで勉強やろっか?」
「あ」
そうだよね、場所まで考えてなかった。
夏休み中図書室は決まった日にちしか開放しないって、なんかで言ってたな。
先生も忙しいのかな。
忙しいって、そういえば。
「蒼、夏休み中って部活忙しいんじゃない?……大丈夫?」
バスケ部は他の運動部に比べ、ハードで厳しいって、サキが言ってた。
休みとかあるのかな。
もしあったとしてもゆっくり休んだり、遊んだりしたいんじゃないかな……
今更ながらに気付いて、急に申し訳ない気持ちに襲われる。
自分は浮かれてばっかりで、蒼の事考えていなかった。
気が使えない自分が情け無くなり、気持ちと連なるように視線を落としていくと。
「大丈夫じゃなきゃ、最初から声かけてないよ」
頭上から優しい、日だまりのような暖かい声が降ってきた。
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