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「あーっ、幸せだなあー」
毎日通る通学路がキラキラ輝いて見えて。
道路際に植えられている木々の緑が、風に揺られサワサワと賑やかに音を奏でている。
いつもの風景が変わって見えるのは、きっとあたしの気持ちが高揚しているから。
さっきから握りしめているスマホを何度も見て、ニンマリと顔を緩めてしまう。
この中に新しく入った蒼の存在が、一際スマホを輝やかせてくれた。
蒼の中にもあたしが入れたと思うと、浮き足立つのを我慢できない。
「るーるーる~」
4時を過ぎた今でもセミの鳴き声が響いていて、あたしもそれに乗せるように鼻歌を口ずさみ始めた時。
「あーちゃんっ」
夏にピッタリな爽やかでリフレッシュな声が、背後からあたしの名前を呼んだ。
それに反応して足をピタリと止め後ろを振り返ると、天使のような可愛さであたしに迫る結芽ちゃんが視界に映る。
「結芽ちゃん!」
「はぁはぁ、良かった。追いつけて」
結芽ちゃんは肩で息をしながら、それでも可愛さは変わっていない。
その姿が愛らしくて思わず溜め息がでてしまうほど。
「あーちゃん待ってたんだ」
「え?あたしを」
「うんっ」
満面の笑みを浮かべあたしの手を取る結芽ちゃんに、ハテナマークが頭の上に沢山並んだ。
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