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人をすり抜けながら階段を一段飛ばして駆け抜けていると、下から大きな笑い声が耳に届いた。
こっちに上がってくる幾つかの声の中に、聞き慣れた声を発見する。
……っ!
その声に反応して、あたしは咄嗟に手すりを掴み足をピタッと止める。
かなりの勢いが付いていたから、体が前のめりになってしまう。
急いで乱れた髪を手櫛で直し、上がった息も整える。
「あれ、桃井じゃん」
声の主はそう言ってまだ距離のあった段数を走り距離を詰め、あたしの前で立ち止まった。
「何こんなとこで突っ立ってんの?」
心底不思議そうに目をくりくりとさせ、あたしを覗いてくる人物。
「蒼(あお)、ち、近いっ」
とっさに出した声は少し掠れてしまった。
でもそれもしょうがない。
だって
好きな人なんだもん。
「はは、わりー。
んで?なにしてんの?」
はにかんだ笑顔を見せながら、目を細める彼にきゅんとする。
蒼の笑顔、大好き。
「売店行く所なのっ
蒼は部活?」
蒼は大きなスポーツバックを肩に下げていて、これから部活なんだと推測できた。
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