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「あーちゃん、ここ座ってて?あたし飲み物持ってくるね」
「あっ、うん!お構いなく」
バタンと結芽ちゃんを廊下に出した大きなドアを見つめた後、部屋をグルリと見渡す。
通されたのは16畳程の広さがある結芽ちゃんの部屋。
ピンク色で統一された部屋の中には可愛いらしい小物や、ぬいぐるみが並べられていて結芽ちゃんらしい。
この部屋に来るまであたしの目に映ったのは、見るからに高級感溢れる螺旋階段や、廊下に置かれた高そうな壺に綺麗に生けられた名前も分からない花。
家というより屋敷と言った方がしっくりくる雰囲気だった。
「お待たせ」
なんだか場違いな気がして生唾をゴクリと飲み込むと同時に、結芽ちゃんが大きなトレイを持って帰ってきた。
「ごめんね、お母さんいないから戸惑っちゃって」
そう口にしながら透明なテーブルにコトンとオレンジジュースを置く結芽ちゃんに、「ありがとう」としか言えないあたし。
だってだって。
こんないかにもお金持ちオーラ溢れる結芽ちゃんと、あたしなんかがお近づきになってもいいのかなと気が引けてしまうんだもん。
「……あーちゃん?」
口を噤んだままのあたしを心配そうに覗き込む結芽ちゃんに、ハッとする。
「あ、ごめん。……頂きます!」
こんな顔しちゃダメだ。
身分違いでも結芽ちゃんがいいって言ってくれてるんだもん。
それだけでいいじゃない。
そう自分に言い聞かせ、あたしはグラスに口をつけた。
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