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「サキっ、お待たせっ」
屋上の思いドアを勢い良く開け、いるであろうサキを呼んだ。
そこであたしの視界に広がったのは、一面の澄んだ青空。
「……うわー……綺麗」
思わず空に見入ってしまい、さっき買ったばかりのお菓子が入った袋をスルリと落としてしまった。
でもそんなこと、今のあたしには気にならなくて。
ただただ、この夏空を、目一杯に焼き付けたかった。
「おーいっ、愛梨?」
完全に意識が飛んでいたあたしは、横からかかる声にビクッと肩が揺れた。
「わ、ごめんサキ。空があんまりにもあたしを呼んだからさ」
早々にそう口にして腰を下ろしながら、落ちてしまったお菓子を袋に突っ込む。
「アハハ、なにそれ?
愛梨って本当面白いなー」
手を口に当てくすくすと笑うサキに、あたしは嬉しくなる。
あたしのこと、分かってくれてるって感じるから。
「それよりさ!
早く青春しよっ」
サキの無防備な右手を握り、屋上の隅に手を引っ張って連れて行くあたし。
ベンチもなく所々床が剥がれている、本当に何もない殺風景な屋上が、あたしたちにとっては大事な場所。
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