虹の行く先

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「こら、ハムちゃんっ! 勝手に行ったらダメでしょ」 あたしの顔にくっ付いたままの白い物体を声の主が持ち上げたらしく、視界にはオレンジ色に染まる夕空が一気に広がった。 「ふ、……っはぁ」 鼻も口も塞がれていたあたしは、酸素を勢い良く吸って息を整える。 「本当にすみません!」 尻もちをついたままのあたしに視線を合わせ、頭を下げる女の子。 うわ、めちゃくちゃ可愛い……! 目の前で申し訳なさそうな表情を浮かべている女の子があまりにも可愛いくて、視線を奪われたまま口を開けっぱなしのあたし。 「……あの?大丈夫ですか?」 そんなあたしを不審に思ったのか、下がっていた眉を潜め、覗き込んでくる女の子。 いけない、あたし今、この子に見入ってた……! 恥ずかしい。 「だ、大丈夫ですっ」 恥ずかしさを誤魔化すように手を挙手させ、笑顔を作るあたし。 女の子は一瞬キョトンとした後、フッと口から息をもらし、口元を緩めた。 「良かったです。家のハムちゃんがすみませんでした。 お怪我はありませんか?」 女の子は白い犬を両手でぬいぐるみを抱くように大事に抱きしめ、再度頭を下げた。 あたしとそんなに歳は変わらなさそうなのに丁寧な物腰に、あたしは内心ドキリとした。 落ち着きがない自分が恥ずかしくなったから。
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