第1章

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翔にそれとなく聞いてみても、変化は無かった。 いじめられてるわけではないのかも。 遊びの延長とか? でも、ランドセルにまで砂を入れるなんて。それとも自分で入れたのか。 学校には行くし、友達の話もする。 気のせいかも。 日に日に砂だけが増えていった。 「翔がいじめられてるって? 証拠がないと学校は動いてくれないぞ。 いつからだよ。相手とか判ってんのか?」 帰宅するなり話したのが悪かったのか、ネクタイを弛めながら、ぶっきらぼうな返事が返ってきた。 「いつからって、そんなの……GW明けから少しずつ……はっきりとは」 ほらな、と言わんばかりの顔で溜息が落ちてくる。 「どんな事でも、不具合や不利益があった確証があってから原因を探るだろ。俺だって仕事のミスが確定したらどんだけでも頭下げるし、何でも出来ることして取り返すけどさあ。 『何か不安』みたいなクレーム来てもどうしようも無いわけ。 お前はずっと家にいるから視野が狭いんだよ。考え過ぎじゃないの」 いつからだろう。夫の顔を見てものが言えなくなった。 学生時代は対等に言えたのに。 「だって、ランドセルにまで入ってたしポケットにまで……普通に遊んでてそんなこと無いでしょう……?先生も気をつけるとは言ってくれたんだけど 」 「まあ、翔が何も言ってないんだろ。あまり大袈裟に言うなよ。それより今日の飯、何?」 そんな風に言われると、担任の先生に相談したのは軽率とも思える。
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