第1章

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数日後、学校からの電話の内容に愕然とした。 『翔くんが、同級生数人に砂を投げつけました』 女性教諭は、詳しくは面談でと言った。良くあるトラブルの一つなので、あまり思い詰めないで下さいね、とも。 何度か繰り返された事を思うと、よほど受け答えが上の空だったんだろう。 ずるずると座り込み、夫に電話を掛けようとして止めた。まだ確かなことは分からないのだから。 履歴を辿る指が、『ケイちゃん』で止まった。 幼馴染みの彼女なら、気持ちをわかってくれるかもしれない。 ケイちゃんはいつでもハキハキしていて困った時には助けてくれた。 小さい頃に男の子にからかわれた時も。 塾で人見知りだった頃も。 高校生の時に知らない男子に話しかけられそうだった……(後から聞いた)時も。 いつだって助けてくれた。 ケイちゃんの声を聞くだけでも、落ち着くかもしれない。 『さな、久しぶり。どうしたの珍しいじゃん。電話なんて』 『うん、ちょっと……声が聞きたくなって』 しばらく、お互いの近況報告をした。 『あ、ごめん起きちゃった』 赤ちゃんの泣き声が聞こえる。 『ごめんね、早くウチも翔くんみたいに大きくなって欲しいよ』 大きくなったらなったで心配もあるよ ケイちゃんには出せない本音を待ち受け画面に、呟いた。
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