第1章

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翔は無理に『良い子』を演じていたのかもしれない 「今日ね、『しょうちゃん先生』が、漢字教えてくれた。しょうは鳥みたいに飛ぶことで、先生は正しいのしょうなんだって」 同じ『しょう』という名前で親しみがわいたようだ。 それからも連絡帳は続いた。 『翔君はお母さんの事が大好きですね』 『家の花のことを話してくれます』 『電車の名前をよく知っていますね』 翔は安田先生に心を開いているようだった。 「おばあちゃん家に行った時に乗った△△線って昔は緑色だったんでしょ。ママが昔乗ってた時も緑色だった?」 「ええっと、ママが高校生の頃は緑色だったけど、そのあと今の茶色になったような……誰に聞いたの?」 「しょうちゃん先生。先生も昔乗って学校に行ってたんだって。」 もしかして同じ電車に乗った事もあるかもしれない。 ふっとそんなことを思った。 まさか、と思いかけて一瞬、引っかかる。 安田先生の雰囲気と眼鏡が、似ている。 話した事はないけど、毎朝見ていた隣町の男子校の一人に。 名前も知らないし顔もおぼろげだ。 優しそうで、ケイちゃんとかっこいいなって話してた。テニス部で……。 恋ですらない記憶。 もし、仮にそうだとしても、知らない人には変わりないけれど。 ケイちゃんなら覚えてるかもしれない。 この間の忙しそうな様子では聞けない。 そんなことを思いながら眠ったせいか 故郷の海沿いを走るローカル線の夢を見た。 二度目の面談の日が決まった。
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