第1章

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その日は安田先生だけだった。 「翔君は落ち着いてきましたね。もう連絡帳はやめます。また何かあればいつでもどうぞ」 そう柔らかく微笑む先生に深く頭を下げていた。 「ありがとうございます。先生のおかげです」 緊張が解けほっとして目に涙が浮かんだ。 教室を出るとき西日が眩しかった。 「変わらないですね」 空耳かと思うほどの囁き。 「昔、僕と会ってるんですよ。 君はいつもケイコの後ろで泣きそうになってた」 逆光のため表情は見えない。 ただ、声音がいつもと違っていた。 胸がザワザワとした。 記憶の中で、ひっかかるといえば。
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