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その日は安田先生だけだった。
「翔君は落ち着いてきましたね。もう連絡帳はやめます。また何かあればいつでもどうぞ」
そう柔らかく微笑む先生に深く頭を下げていた。
「ありがとうございます。先生のおかげです」
緊張が解けほっとして目に涙が浮かんだ。
教室を出るとき西日が眩しかった。
「変わらないですね」
空耳かと思うほどの囁き。
「昔、僕と会ってるんですよ。
君はいつもケイコの後ろで泣きそうになってた」
逆光のため表情は見えない。
ただ、声音がいつもと違っていた。
胸がザワザワとした。
記憶の中で、ひっかかるといえば。
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