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織田が野球場へと下りワームとの距離を詰める。
距離にして5メートル程だろうか。
両者は一歩も動かずにお互いの出方を見ていた。
そして、それは一瞬の出来事だった。
ワームが姿を消す。
いや、超高速で移動を開始した。
織田は慌てる事なくベルトの右側部のスライド式のトレーススイッチを操作する。
「クロックアップ。」
〈CLOCK UP〉
電子音声と共に織田も姿を消した。
どうやら〈運命の輪〉のライダーはワームと同じく超高速での移動を可能とするらしい。
そして時間にして僅か数秒の出来事。
織田とワームが姿を現したと思えば、お互いの立ち位置は変わっており、ワームは地面に倒れ込んでいた。
どうやら織田の勝ちらしいな。
そして織田は右手に装着されたカブトムシ型のツールを180度回転した。
「……ライダー……ビート……」
〈RIDER BEAT〉
電子音声と共に織田の右腕が光輝く。
そして、そのまま倒れ込んでいるワームの腹部に拳を突き立てた。
緑色の炎を上げ爆散するワーム。
仲間の敵は取れたのだろうか?
織田の心中は本人にしか解らない。
「本物を知る者は、偽物に騙されない、か。」
ただ、流れ落ちる雨がまるで織田の涙のように俺は見えた。
人が死ぬ。
それは夢や幻ではなく、現実なのだと俺は改めて痛感した。
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