第1章〈俺が正義〉

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織田が野球場へと下りワームとの距離を詰める。 距離にして5メートル程だろうか。 両者は一歩も動かずにお互いの出方を見ていた。 そして、それは一瞬の出来事だった。 ワームが姿を消す。 いや、超高速で移動を開始した。 織田は慌てる事なくベルトの右側部のスライド式のトレーススイッチを操作する。 「クロックアップ。」 〈CLOCK UP〉 電子音声と共に織田も姿を消した。 どうやら〈運命の輪〉のライダーはワームと同じく超高速での移動を可能とするらしい。 そして時間にして僅か数秒の出来事。 織田とワームが姿を現したと思えば、お互いの立ち位置は変わっており、ワームは地面に倒れ込んでいた。 どうやら織田の勝ちらしいな。 そして織田は右手に装着されたカブトムシ型のツールを180度回転した。 「……ライダー……ビート……」 〈RIDER BEAT〉 電子音声と共に織田の右腕が光輝く。 そして、そのまま倒れ込んでいるワームの腹部に拳を突き立てた。 緑色の炎を上げ爆散するワーム。 仲間の敵は取れたのだろうか? 織田の心中は本人にしか解らない。 「本物を知る者は、偽物に騙されない、か。」 ただ、流れ落ちる雨がまるで織田の涙のように俺は見えた。 人が死ぬ。 それは夢や幻ではなく、現実なのだと俺は改めて痛感した。
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