第1章〈生きるとは〉

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「高鳥が飯を一緒に食べない理由?」 「ああ。いつも誰かと一緒なのに飯の時だけ席を外して自室に閉じ籠るだろ?あいつ、ちゃんと食べてるのか?」 「………俺がとやかく言う義理はないが、お前も仲間だ。知っておいていいだろうな。」 俺は今自室に織田を呼び出し高鳥について話を聞いていた。 自室と言ってもベッドが5つ並んだ寝室でトレーラーにはベッドが5つ並んだ寝室が2部屋存在する。 そこを男女別れて使用しており、余程の事が無い限り、この部屋を睡眠以外には使わない。 「高鳥がちゃんと飯を食べているかについてはNOだ。だが最低限のエネルギーは補充している。」 「はあ?機械じゃあるまいし電気でも充電してるのか?」 「お前は兵糧丸って知ってるか?」 「?実際見た事は無いが忍者なんかが携帯する非常食だろ?」 「そうだ。それに近い物を高鳥は摂取している。まぁ、現代ではサプリメントと言った方がいいかもな。」 「そんな物腹の足しにならないだろ?ダイエットでもしてるのか?」 「いや、そうじゃない。俺達は旨い物を食べる喜びを知っている。それは物心付く前から備わっている事だろ?」 「まあな。食は三大欲求の一つだからな。」 「高鳥は、その喜びを知らないんだ。だから味気の無い物で生きていく最低限のエネルギーを補充する。あいつ俺達にはコーヒーやらお茶やらを淹れるくせして自分は水しか飲まないんだ。」 「………喜びを知らない………不便だな……」 「確かにな。だが、それも個々の自由だ。例えば人を愛する事が素晴らしいと考える人間もいれば、恋愛等した事もない人間もいる。同じような原理だろうな。」 「………かもな。」 「何で高鳥がそうなったのかは俺も知らん。後は直接聞いてくれ。」 織田は話を終えると寝室から出て行った。 確かに何を食べようが個人の自由だが食べる事の喜びを知らないなんて人生を損している。 俺は余計なお世話かも知れないが行動してみる事にした。
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