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「何って……」
恵はそこで口をつぐんだ。しかし、全てを見透かしているかのような高林の視線は、彼女に沈黙を許さなかった。
「飽きもせず同じ話題を繰り返すクラスメイトに」
これは本心だった。恵は半ば開き直った。
何とも不思議な光景だった。授業を抜け出した男女二人が、閉鎖された屋上で互いを探り合っている。
「それは僕に対しての噂話のことかな?」
「ええ、そうよ」
「嘘だね」
高林の返答は早かった。まるで恵のその答えを事前に予知していたかのような、さらりとした口調だった。
「な、何を言ってるのよ! 他に何かあるとでも言うの?」
「ムキになって反論しているのが良い証拠だね」
高林はしゃくりあげるように笑った。恵は混乱しつつも、高林への視線だけは外さないようにした。
「あなた本当に高林くんなの?」
いかにも。高林はそう言ってくるりと一回転してみせた。
「ま、君の困惑も無理ないね。教室の僕はこんなに饒舌じゃないし」
話を戻そうか。高林は一方的に進めた。恵は直立不動で彼の一挙手一投足を見守るほかなかった。
「学校裏サイトって知ってるかい?」
「し、知らないわよ」
恵の額から脂汗が一筋伝った。高林は意味深長に大きく溜息をついた。
「その学校の生徒が匿名で書き込むネットの掲示板。僕の噂の発信源はここだよ」
高林はおもむろに携帯電話を取り出した。男の物とは思えないピンクの二つ折りだ。
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