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「じゃあね、お姉さん」
「うん、じゃあね」
女の子は市場から買ってきたであろう魚を両手いっぱいに抱え込みなおすと、後ろを振り返りふらふらと危なげに走りさる。
私はその様子を城門の前の石に腰掛けながら、女の子の姿が見えなくなるまで見つめていた。
それにしても同盟のことがこんなにも伝わっていなかったなんて、これからは気をつけないと。
ざっくりと過去のお話をしたが、見事に信じてもらえない。
それもそのはず、なんせ私のことは死んだも同然にいない者として伝わっているのだから。
伝わっているという表現もおかしいか。
そもそもお姫様は彼女一人だけだと思われてるのだから。
お姫様は皆に愛されてるはずでしょ?
「痛いところついてくるなー、子どもは。」
事実だから仕方ないけど。
それにしても城門の警備ってこんなにも暇なのか。
あっちの国が治安が悪いだけかもしれないけど。
「おい」
声をかけられ上を向く。
そこに凛々しい顔立ちの青年が一人私を睨みつけていた。
「交代だ」
「はい」
私は抱え込んでいた槍を支えにして石から立ちあがり、男の横を歩く。
「同胞殺しが」
横を通り抜けると、私に聞こえるように吐き捨てる。
それをあえて無視して無言で立ち去る。
事実なのだから言い返すこともできない。
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