《3》

10/18
前へ
/434ページ
次へ
  仕事中なのに。私はヒアリングに来ているのに。 きっかけもとっかかりも、いつもそこにあるはずの言葉が何もかも、頭の中から消えてしまったみたいだ。 ふっ、と。 淡く笑った並河先生が、私に向き直った。 「……さ、どうしようか」 「え……?」 「研究室、案内しようか?」 このまま向き合って黙っていたって仕方ない。 そう感じての提案だったのかもしれない。 私は軽く頷いて、「お願いします」と言った。 正面から彼と対峙したままじゃ、私は学生時代のあの頃に、戻ってしまったままになると思ったからだった。 .
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4346人が本棚に入れています
本棚に追加