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「どうぞ」
そう言った並河先生に通された研究室は、段ボールの山だった。
いくつか開けられた形跡はあるけれど、きっと本棚に並ぶ資料の一部だろう。
私の視線を気にしてか、先生は「まだ準備中だから、散らかってて。悪いね」と少し照れたように補足した。
まだ新しい建物の匂い。
見慣れない窓の外の風景。
知らない教科書。
あの頃とはすべてが違うはずなのに、先生の背中を見つめているとそんな違いは些細なものに感じられた。
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