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「本日はありがとうございました。今後とも、よろしくお願いいたします」
「ははっ、こちらこそ」
また笑った先生は、先にドアに進んでそれを開いてくれた。
有り難く頭を下げて、退出する。
「楽しみにしてるよ、廣田の文章」
「……レポートとは、違いますから」
苦い顔をした私に、並河先生は何がそんなにおかしいのか、くすくす笑った。
「そりゃそうだ。じゃ、また」
「はい、失礼します」
もう一度深く頭を下げて、その場を離れた。
振り返らない。
先生がそこで見送ってくれているかどうかなんて、絶対確認しない。
胸の中で繰り返し、そんな馬鹿みたいなことを言い聞かせていた。
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