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連れて行かれたのは、いつもの居酒屋……とはかなり趣の違う店だった。
割烹と書かれた柔らかな灯りと店名くらいしかなく、店構えからして上質そうだ。
必要以上の情報がないお店というのは、たいてい、お高いものだから。
「あの、こんな高そうなお店じゃなくても」
店のドアを開けようとしていた清野さんに、慌てて声をかける。
ご馳走になるという手前、あまりに高そうなお店は遠慮しておきたかった。なのに。
「うるせえな。俺が来たかったんだよ」
小さく舌打ちして、清野さんはずかずかと店の中へ入っていってしまう。
止める間もなかった。
というか止めていたらますます機嫌を損ねてしまうかもしれなかったから、躊躇したせいだ。
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