《4》

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  「やっといつも通りか。面倒な女だな」 馬鹿にしたわけでなく、どちらかというと……ホッとした、みたいに聞こえた。 私が遠慮して硬くなっていたのを汲み取っての言葉だろうと、思う。 清野さんが、先輩が、わざわざ設けてくれた場だ。 しっかりと楽しまないと、失礼になるだろう。 私はもう一度グラスを傾けて、ビールを味わった。 心の強ばりが少しだけほぐれた気がして、ふっと微笑む。 「有り難く、ご馳走になります」 「何かしこまってんだ、馬鹿」 はっ、と浅く笑った清野さん。 私もにっこり笑い返して、少し遅れたイレギュラーな誕生日会が始まった。 .
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