夢の果てに

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 ――時を遡ること、五年前。 「これで全額」 「確かに。ありがとな」  ばつが悪そうに微笑む柾木をふて腐れ気味に見つめる加賀宮は、肌寒い一月でも汗をかいている首をぼりぼりと掻いた。 「万年金欠病のおれだって、友達に餞別くらいは用意するさ」 「餞べ……」  柾木の整った精悍な顔に、苦笑が滲む。 「一応、おれから借りてた金だよな?」  細かいことは気にすんなとぼやき、加賀宮は突然仕事を辞めた柾木に疑問をぶつけた。 「何だってさ、サンタになろうと思ったんだよ。これからも姫何とかレンジャーやってれば」  答えはすぐ、穏やかに返ってきた。 「……レンジャーより、ちょっとは夢があるかなって」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加