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「……宮下さんの気持ちには、応えられない。ごめんな」
「ううん!返事、くれてありがとう。これで諦めもつくし、ほんと、大丈夫だから気にしないでね!」
パッと上げた彼女の顔は、
笑っているのに今にも涙が零れそうなほどに瞳が濡れていた。
少し悪いと思う気持ちも芽生えたが、
ここで俺が慰めるわけにはいかない。
中途半端な優しさは、
相手の覚悟を鈍らせてしまうから。
(――あぁ。俺って李煌さんにも中途半端だったんだな…。あの人は何とも思っていなくても、俺の態度は兄弟としても混乱を招く結果にしかならないわけか)
あの日の兄貴の言葉が鮮明に蘇って、
僅かに眉を寄せた。
「じゃあ私、行くね?部活頑張って!応援してるから!」
明るくて元気な声に目を丸くする。
(…はは。女ってすげぇな)
遠ざかって行く彼女の後ろ姿を見送りながら、
自分の情けなさに自嘲を滲ませた。
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