第1章

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母さん曰く 「確かにあなたが反抗期の時はいっぱい暴言も吐かれたし暴力もふるわれた。それでもね…あなたはあの時あげたお茶碗で、私の作った料理をいつもしっかり食べてくれた。私はそれが何よりも嬉しくて、生き甲斐だったの。あなたは私に生き甲斐を与えてくれた大事な存在、唯一の家族で、唯一の息子なの。だからね、最後に言っとくわ…私に生き甲斐を与えてくれて、本当に、本当にありがとう」 俺が母さんの言葉を知ったのは去年、遺書という書面からだった。 結局俺は母さんにお礼も言えず、謝ることすら出来なかった。 今日は母さん一周忌であり、今法事も無事に終わったところだ。 俺は法事を行った寺院から家に帰り、自宅にある仏壇の前に正座する。 今度はしっかりとあの世にいるであろう母さんに俺の意思を伝えるために祈る。 お供えものとして俺の大事な宝物と母さんの大好物、今は所々かけて不恰好なお茶碗に苺大福をのせたもの。 目を閉じ 母さん ただ一言を祈る。 本当に…ありがとう、と。 俺の頬を一筋の涙がつたった。
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