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ノンフィクション
【安楽死】
実験動物の末路について話してみようと思う。
彼らは実験終了の烙印が押された瞬間に、用済みになる。自然界への放出は生態系を破壊する観点から容認されていない、つまり、彼らに待ち受けるものは『確実なる死』であり、技術者らは『死の確認』を義務付けられている。
「処分方法指針」は、『化学的または物理的方法により、できる限り処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能または肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法とされる。
では実際の現場ではどのような方法を取るのか。
致死量以上の麻酔薬の投与、炭酸ガス(二酸化炭素)の吸入、頚椎脱臼が一般的とされる。
だがしかし、全てこの方法が取られる訳ではない。
新生子は低酸素血症に抵抗性があるため、以上の方法では長く苦しむこととされることから、熟練者による麻酔後、手術用ハサミによる断頭や頚椎脱臼による安楽死が容認されている。
そうして尊い生命の灯を散らした彼らの行き着く先は、死体用の冷凍庫。
彼らの遺体は総重量に応じた額で業者に引き取られていく。
私は願わずにはいられない。
今こうしている間にも、生命を投げ出そうとしている方へ……
私は決してあなたの辛さや境遇や悲しみを全て分かってあげられるような高潔な存在ではありません。
私は今もこうして、日々の勤務の中で失われていく生命を心を痛めながら見送ることしかできません。
彼らの小さな生命は、私達が生きるため――病気の解明や新薬開発などに日々消費されていくのです……今までも、これからも。
彼らの尊い生命を助けることが出来ない私は、代わりに、今もし投げ出そうとしているかもしれない生命をひとつでも助けたいと……心からそう願います。
小さな体躯に、二つのglass
その未来を想うと苦しい。
どうか、最期のその時が訪れる瞬間まで、幸せな生であってほしい。
飼育室に並べられるたくさんのケージ。
その箱庭の中に生きる、小さくて大きな生命。
未来に――あなたたちのお陰で助かる人がたくさんたくさんいる。
私達は、彼らの命をもらってこれからも生きて、科学を発展させてゆくのでしょう。
二つのglass、同じなのに。
人も、マウスも。
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