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「ぁ、あー……あ、声出た」
いくらか独り言を喋って、声帯の回復を確認した。
「手は…動かないか」
腕に力を込めてみたが、指先一つ動きもせず、せいぜい首が動かせる程度だった。
思わず溜め息が漏れる。
「魔力だって無限じゃないんだけど…」
声を形にするように、呪文を口にした。
「гранат(グラナート)」
呪文は、赤い光を放つ字の形を持って宙に舞い、オレの手足に巻き付く。
赤みが薄れる頃には、オレの身体は十分過ぎるほどに動くようになった。
「ほんと、最悪」
軽く屈伸をして、肩をゴキッと鳴らす。ちょっと痛かった。
「ニー」
「はいっ!」
一言、名前を呼べば俺の目の前に現れる少女。本名はニーナだけど、いつも呼び終える前に現れる。
オレを見るニーナの目が、徐々に見開かれていき、最終的には「何したんですか!?」と叫ばれた。
「何って…」
「何をどうしたら、床一面を血の池に出来るんですかぁっ!?」
「普通に、死にかけてた」
辺りを改めて見れば、それはもう見事な血の海で、そりゃ出血多量で死にかけるなあ、などと思う。
「魔王様ともあろう御方が、何普通に死にかけてるんですか!」
あぁ。オレ、魔王だったね。
だからさっき、回復魔法使えたんだっけ。
「だって、相手は封印の剣を持った勇者だったんだよ」
なんか、封印せずに帰っちゃったぽいけど。
「だからそういう時は、私を喚んでくださいって!」
怒られた(´・ω・`)。
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