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-イクト-
カーテンから差し込む光のせいで目が覚めた。
ん〜。
まだ重たい瞼を開け
ボヤける視界を晴らす為に擦った。
上半身を起こそうとしたけど
龍月に手を握られてたからやめた。
暖かい布団の中で龍月の綺麗な寝顔を見る。
昨日は色々あったけど…お風呂楽しかったな。
久々に見た感じがする…
家を飛び出す前はいつも…見てた。
不安で眠れない時も、怖くて目が覚めた時も。
いつも、安息で、穏やかな寝顔を見ると落ち着いていた。
龍月の頬を触り、夢じゃないと
幻覚じゃないと確かめる。
あ、一応言っとくけど俺
全裸だよ。
龍月は寝巻き。
もう、終わったんだよな…
お風呂で穢れた身体を洗っても…
この手首を見る度思い出す…
身体が覚えてる、彼奴に犯された記憶。
受けた痛みも全部…忘れたいのに
忘れたはずだったのに
全部
蒸し返された…蘇ってきたトラウマ…
思い出すだけでも、身体が震えてくる。
俺、弱くなったかな…
そっか…
「俺…臆病なんだ…」
『貴方は強いですよ。』
「え?」
呟いたつもりだったのに、龍月が真っ直ぐ俺を見据えて
答えてくれた。
「起こしちゃった?」
ぎゅっと手を握ってくれる龍月。
澄んだ瞳が俺を見据えているのに
どうして、俺は…真っ直ぐ、見つめ返す事が出来ないんだろう…。
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