私は貴方に溺れています。

7/9
前へ
/393ページ
次へ
イクトは、私の顔を見上げました。 とろんとして 涙を溜めた瞳は…美しくて…妖艶でした。 「本当?」 幼子のように尋ねてくるイクト。 『私が嘘を言ったことがありましたか?』 「ううん…ない…ないよ。」 微笑む彼の瞳から一筋の涙が流れました。 その涙を拭い頬を撫でました。 熱を持ったイクトの身体を離し 再び手錠を見ました。 嫌でも目につく…イクトの痛々しい手首。 きっと 逃げようとしていたのでしょうね。 膝で踏んでいた枕は、濡れていました。 イクトは…泣いていたんでしょうか。 どれだけの恐怖を…一人で…背負って…どれだけの痛みを…味合わせたんでしょうか… 「龍月…怒ってる?」 突然訊かれて、ドス黒い思考が飛んでいきました。 「龍月、怒った顔してる…よ?」 気まずそうなイクトの顔。 私はそんなに…険しい顔をしていたのでしょうか?
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加