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濁流が地表に呼び覚ました顔たちが
禍々しくも忌まわしい
此の身の宿命を
奪われた時と共に
まざまざと蘇えらせる
生贄と称して間引きされた私を残して
村は飲まれた
十五の歳の政
丘陵に祀られし社の祠にその身を捧げる
如何に風雨に晒されようとも
ただその時を待つ
夜半に現れし獣人とまぐわい
その四肢と血肉を以て
己の生に懺悔するのだ
逃げる事は許されぬ
抗う事は許されぬ
しかし待てど暮らせど
獣人は現れなかった
飲まれる故郷を嘲笑った果てに
さまよい歩いた私の着物は
擦り切れ千切れた
滲む血を舐めたのは
ちくり
あの時
私を貫いた棘が咲かせた赤痣
それは
生贄の刻印
獣人は私から過去を奪い
熟す時を待っていたのだ
ちくり
ちくり
ぐちゅり
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