第七話【縄張り】

2/36
前へ
/36ページ
次へ
静かだった。 会社から歩いて十分程の小さな公園には、子供はおろか、人影一つない。 ブランコと、変わった形をしたジャングルジム以外、ここにあるのはペンキの剥がれたベンチだけだった。 私はそれに腰かけ、空を見上げている。 嵐でも来るのか、とうに日が暮れた空は、不気味な色彩をしていた。 あれはなんという色なのだろう。 赤黒いような光を放つその名を、私は知らなかった。 悪魔の色だと言われれば、 それほどしっくりくるものはない。 横の細い路地は、比較的交通量が少ない。 駅とは反対方面なので、会社の人が通ることもほとんどなかった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加