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二十分程遅れて、彼がやって来た。
立ち上がって待っていた私の前に来ると、悲しみの滲んだ顔で笑う。
「なんとなく想像はついてたけど…。どこかでお茶でもしながら、って雰囲気ではなさそうだね」
「山下さんがそうしたいなら、私はそれでも構いません」
「……フラれるのを人に聞かれるのは嫌だな」
ダメ。
こんな事で目を潤ませたりしちゃ。
私が今この人に出来るのは、容赦無く傷つける事だけ。
その事に私が苦しんでいるなんて、微塵も思わせてはいけない。
私が彼を大切に想っているこの気持ちは、彼の望んでいるものとは違うのだから。
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