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まるで朽ちた旧型ロボットの木で造られた右手だけが残っているかのような、不恰好な代物だった。
コンクリート張りの建物には、それがオブジェではない事を示すかのように両開きの扉が構え、そこから一直線に石畳がこちらの足元へとのびてきている。
気持ちばかりの石造りの門柱だけが今まで歩いてきた砂利道と石畳を隔てていた。
「……ここで合ってるよな?」
不安に駆られ、思わず呟く。
今度は邸の周囲へと視線を向けてみる。
邸へと続く石畳の周りには、邸を包むような庭が広がっているにも関わらず、その庭に花壇や植木は見当たらず、ただ樹齢を感じさせる松の木が一本たっているだけ。
しかし、それに反するかのように邸の背後、周囲は雑木林が鬱蒼と茂り、邸の敷地を切り出すように自然の塀を造っていた。
「………………」
こうも怪しげだと、のこのこやってきた田舎者の俺でも、流石に帰りたくなってくる。
俺が住んでいた辺りも、同じように自然に囲まれているような場所ではあったが、こことは雰囲気が明らかに違う。
なんと言うか、……ここには人の気配が無い。
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