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昔から自分がついていないのは理解していたつもりだが、こうもこうまで受難体質だとは、流石の俺も知らなかった。
「なんじゃこりゃぁ~!?」
慣れない都会の街並みを抜け、やっとのことで目的の場所へと辿り着いた俺は、いきなり殉職寸前の刑事みないな声を上げなくてはいけなくなった。
「あれ?君……もしかして望月くん?」
途方に暮れている俺に、壮年の男性が話しかけてくる。
男性は少々疲労に満ちた顔に無理矢理浮かべたような笑顔を薄黒く汚している。
そして、その後ろには―――完全に崩壊した建物の残骸があった。
「いやぁ、折角遠くから来て貰ったのに申し訳ないねぇ。実は隣の家が放火にあっちゃって、うちも燃えちゃったんだよね」
晴れ渡った空の下、場違いな空笑いを浮かべる店長の笑顔があまりにも心に沁みた。
高校卒業後、「料理人になるっ!」と言い出した俺を、放任主義の両親は二言返事で了承しやがった。
俺の実家は栃木で農家を営んでいる。
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