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両親は日がな一日畑に出ていて、一人っ子の俺は幼い頃から留守番や自炊をするのが当たり前だった。
そのお陰と言うべきか、そのせいと言うべきか、料理にはそこそこ自信があった。
ならば、と跡取り息子という立場を放り出し、田舎を出て料理修行に行くと宣言したのだが……あいつら、少しも止めようとしなかった。
なんでも、家業は共同経営している伯父んとこの息子、俺の従兄弟にあたる人が継ぐ事になっているそうで、別に俺がいなくても構わないそうだ。
(どんだけ俺のことないがしろだよ……)
まぁ、そういうわけで、俺は実家を出て、都内の住み込みで働かせてくれる店を見つけて上京する事になった。
住み込み可能な店を探した理由は、調理師免許取得の為に本格的な修行を行えるようにという事と、快諾したくせに「生活資金は自分で稼げ」とあの両親が言ったせいだ。
ちなみに、都内に決めた理由は特にない。
たまたま決まった就職先が都内だったというだけ……いや、もしかしたら無意識の内に実家から離れたいと思ったのかもしれない。
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