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所持金が三千円と少し、銀行にはまだ幾らか貯金はあるものの、心許ないには変わりない。
荷物は、傍らにある衣服や身の回りの品が入ったドラムバック一つきり。
住み込みと言っても、ほぼ居候に近い状態で厄介になる予定だったので他には持ってきていない。
(かなり好い条件だったんだけどな、あの店。)
十代の奴が、都会の威圧感に気圧されながら、挙動不審に歩いている。
これでは、まるっきし家出少年の風体だ。
勿論、今から実家に戻ることも可能ではあったが、勢いよく出てきた手前、すごすごと出戻るのは癪に障る。
軽く瞳を閉じれば、あの両親の爆笑する姿が目に浮かぶようだった。
(店長さんが電話をかけてくるまでは、僅かな希望に縋ろう……)
「漫画喫茶か……」
取り敢えず、腰を据えて飯でも食いながらゆっくり考えよう、と辺りの店先を眺めていると、鮮やかな色の看板にデカデカと書かれた『漫画喫茶』という文字を見つけた。
田舎町でぬくぬくと暮らしていた俺は、漫画喫茶なるものに入ったことが無かったが、テレビなんかでそういう所かくらいは知っていた。
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