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(だからと言って突き飛ばさなくてもいいと思う……)  やはり都会の風は冷たい。 「ん?なんだこれ?」  いつまでも電柱とキスしているわけにもいかないので、鼻をさすりながら体勢を直す。  すると顔に張り付くようにして何かが付いてきたらしく、ペラリと手の中へと舞い降りた。  『求人求む!』  目を落とすと、それは電柱に貼り付けられていた求人ポスターのようだった。  印刷ではなく、手書きの、筆で書かれたような文字がデカデカとそこに躍っている。  永い事貼り付けられていたのか、接着に使われていた媒体は完全にその役目を失っていた。  なんとかギリギリで貼り付いていたものがぶつかった拍子に剥がれてしまったのだろう。 (はて?電柱にこういったものを貼り付けるのは違法ではなかっただろうか?)  そんな事を考えながら、何の気なしにその文面へと目を通した。
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