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私は一生懸命に走る、捕まったらきっと酷い目に遭うに違いない、両手で魚を持ちながら村の外へ向かう。
後ろから私よりも遅いリズムで足音が近づいてくる、私の荒い呼吸と重なるように低い呼吸が後ろから響く。
「止まれ!」
まるで不協和音のように響き渡ったそれは、私のすぐ後ろまで近づいていた。
振り返るとすぐ後ろにその男がいる。
その時だった、私には一瞬何が起こったかわからなかったが、腕と膝に痛みが走った。
どうやら私は後ろに気を取られた瞬間に、何かを足にひっかけ転倒してしまったらしい。
こんな事をしている場合じゃない、私が立ち上がり走り出した。
その瞬間、私の腕は後ろへ引かれ魚が宙へ舞う。
「あっ、やだ離して!離して!」
「この野郎、こんなとこまで逃げやがって。」
「痛い、痛い!」
私の腕は凄い圧力で握られ、私はその痛みで思わず声をあげた。
そして男は私の頬を何度も何度も叩く、何度も何度も……。
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
痛い、痛い。
どうして、どうして私だけこんな目に合わなくちゃいけないの。
どうして……。
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