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それから、一万円札をテーブルに投げ捨てて。逃げるみたいに彼女は消えていった。
ぽつんと、残された私に注がれる好奇の目。
ピアスをそっと外して、札をくしゃりと握り締めて。
一番近くのテーブルに居た二人の主婦らしい人らに歩み寄る。
「女が女に惚れて悪いかよ?気持ち悪くて悪かったな!クソババア!」
全部聞こえてたし、苛つかない訳もない。
二人のテーブルにピアスと札を叩き付けて、会計に向かった。
またひそやかなざわめきが広がった店内から、私に向けられる視線を感じたけど。
どうでもよかった。
思い出してみて。くれてやる意味は無かったと、ピアスホールから手を離して。くしゃくしゃの一万円札だけを悔やんだ。
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