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「え……」
だから、反応が遅れた。
『そこに誰かいるの?』
「いるよ! いる! ここにいるよ!」
藁にも縋る思いで扉へと這い寄る。
「部屋から出れないんだ!」
『なぜ?』
「なぜ……?」
声は扉越しでも分かるほど無機質で冷たいものだった。
扉の向こうにいるのは女の子らしいが。
その声の主は僕を救ってくれる人ではない気がさえ起こり始める。
なぜなんて、分かってたら苦労しないんだ。
ずっと閉じ込められてるんだ。
でも、なんで僕は閉じ込められてるの?
少女への返事を考える。
出口の見えない思考の迷宮。
『出てくればいいじゃない?』
無責任に言い放たれた言葉に僕は苛立ちを覚えた。
「それは無理だよ!」
喉が張り裂けんばかりの声量で生の感情を投げつける。
それが出来たら苦労しない。
それが出来たらーー
助けなんて求めない。
やっぱり僕の苦しみは誰にも理解されないんだ。
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